第5種目スピニング片手投げ距離種目

釣りの道具を使って行うのが本来のキャスティングスポーツかもしれませんが、距離を求めるとそれなりに特化した道具立てになるというのも自然な流れでしょう。この種目はそういう「特化」した種目のひとつといっても過言ではありません。

2.5mのロッドを片手で振る!

メートル単位ではピンと来ないかもしれませんが、約8フィート2インチ。フライロッドでは普通かもしれませんが、ルアー用のロッドで考えると、シーバスロッドか湖のトラウトやサーモン用ロッド。いずれも両手で扱うダブルハンドが基本です。なのに、それを片手で扱う、というのが現行のルールになっています。遠心力を有効活用するため、リールはロッドの最下部につけています。

使うガイドの大きさも尋常ではありません(笑)。ラインが通り抜けていくときの摩擦を減らすために、極力大きなガイドをつけています。魚との引き合いをすることがないため、強度は二の次。
このタイプのガイドは、元々は南アフリカの選手が手作りをしていたものです。それを1996年に世界選手権に参加した選手が購入して持ち帰ったものを、日本の仕事師にお願いして手作りしてもらったものが出回っています。ステンレス製でニッケルボロンのメッキが施されているタイプと、ハードクロームメッキタイプのものの2種類あります。他にはFujiガイドのSiCリングを取り外したものを取り付けて使っている選手や、自作で作っている選手もいたりします。

リールもいろいろ

競技用というわけではないのですが、ヨーロッパの大会で未だに使い続けられているリールが、TAPリール。不思議な構造のリールです。スピニングリールでは当たり前のようになっている、スプールが上下「しない」のです。スプールが上下しない代わりに、スプールが回るため、綾巻状態になってラインが巻き取られます。いと崩れしにくい状態で巻き取られるため、スプールエッジが無くてもラインがドバっとでてしまうことがない、つまりスプールエッジの抵抗がなくなるため、より遠くに飛ぶだろう、という考えです。

他に使われているリールは、Mitchell 300サイズ。コーモランのリールも最近良く見かけます。ロングノーズよりもスプールの直径が大きくストロークが短いタイプが主流です。

ラインは0.18mm

日本の号数で言うと1.2号相当です。5LB表記のものも、ほぼそれくらいです。先端に0.25mm以上の太さのショックリーダーを付けるため、このラインに強度は求めてはいませんが、心理的にはなるべく細い、できたら0.183mmくらいのラインを探して使いたいところですが、これがなかなか見つかりません。市販されているラインは、ほとんど表記されている直径より太くなっています。0.19mm程度であればいいほうです。100mスプールを購入するよりも、300m巻きなどのボビン売りがお得です。

回転して投げる

2.5mのロッドを片手で投げるとすると、腕だけの力で振るのは至難の業です。回転することで得られる遠心力を使って、ロッドを曲げていきます。100m先が50mの幅のV字コートを背にして一回転半、横に回転するスタイルが主流の投げ方です。タイミング良く振り切ることができれば、7.5gのプラグを無風であれば65m、追い風であれば70mオーバーの飛距離が出ます。とはいえ最初からいきなりこの投げ方は難しいでしょう。正確度種目のオーバーヘッドキャストやペンデュラムキャスト等から試していきつつ、徐々に回転することを覚えていきます。幸いにも今はYouTube等で、実際に投げているところを見ることができるので、充分にイメージトレーニン部をしながら、そしてまずは真っ直ぐに飛ばすことを心がけながら、徐々に力をいれることを試してみて下さい。参考になるYouTube動画へのリンクを貼り付けておきます。2013年の世界選手権の決勝です。ゼッケン50番は日本の加登選手です。

 まだまだ記録は伸びる!?

この種目の最大の醍醐味は、回転して投げることの難しさの克服と、たった7.5gのプラグを70m先まで飛ばすということの爽快感ではないでしょうか。道具を充分に使いこなせないことには達成できない飛距離かもしれませんが、だからこそ面白いといえるでしょう。もちろん、2.5mのロッドを使わない選手もたくさんいます。Steve Rajeffも7フィート(210cm)前後のロッドを自分は回転せずに体の周りを一回転させるスタイルでした。リールもTAPが全てではありません。日本のリールのライン放出性能ならば、充分張り合うこともできるでしょう。今の記録をひとつの目標としつつ、針金ガイドにも過去のリールにも負けないスタイルを見つけることも、これからの楽しみのひとつとなるかもしれません。

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