Casting Tips Vol.3 第3種スピニング正確度アレンバーグ種目
キャスティングスポーツの魅力をいろいろな角度からご紹介するコーナー、『Casting Tips』。第3号では、スピニング正確度アレンバーグ種目、を取り上げます。
『アレンバーグ』とは聞き慣れない単語ですが、競技の内容としては『決められたスタイルで的に当てる』ということです。10mの距離からは「振り子投げ」、12mの距離からは、ターゲットに向かって「右側からのサイドキャスト」、14mの距離からはターゲットに向かって「左側からのサイドキャスト」、16mからは「どのような投げ方」でも良く、最長の18mからは「オーバーヘッドキャスト」で投げなければなりません。釣りに行った時に、オーバーヘッドキャストしかできないと困るだろう、ということからの発想なのでしょう。
この種目で使うターゲットは、他の正確度競技とは違い、76cmの黒い的を中心とした同心円の大きな的を使います。中心の黒い的に当たると10点、次に8点、6点、4点、2点が加点されます。合計得点はそれぞれの距離から2投しますので100点となります。
アレンバーグターゲットは、全体の大きさは3m以上あるので、合計得点が「ゼロ」にはなりにくい反面、黄色い的を使う第4種スピニング正確度種目と違い、10点のターゲットは傾斜していないので、より小さく見えて当てにくいというデメリットもあります。しかし、手練の選手たちは見事に当てているのです。審判をしていると良くわかるのですが、狙いを定めて構えたロッドティップから放たれるプラグが、一直線にターゲットの上空めがけて飛んでくる。そして、通り越すか、と思った瞬間、空中で「フワッ」と止まって、吸い込まれるようにしてターゲットに当たる、いや、『ターゲットに置く』という表現が正しいと思えるくらいソフトに落下するのです。そして、時には跳ねること無く、静止する、のです。かと思うと、別の選手は「低い!手前に落ちる」と思うくらいの低い弾道で掠めるように的に当ててきたりもします。それぞれがいろいろな技を持っているのです。
世界選手権での審判は、ほとんどが真ん中の10点を出してくるので、比較的ジャッジは簡単ですが、国内の大会はまだまだ初心者の方も多く、同心円部分に当たった点数を判断するのは、なかなか難しかったりします。微妙なところに当たる場合も少なくはありません。そこはその審判の動体視力に頼るしかないところでもありますが、我々審判が常に心がけていることがあります。それは「いかなる場合も選手有利」という判断基準です。「疑わしきはヒット!」「怪しいヒットは加点」が原則です。写真判定などの導入がまだまだ遅れているジャンルの1つでもあることから、目視による判定が必要になります。明らかに外れたと判断できる場合以外の、怪しいヒット、は全てヒットにする、とは、国際審判員審判長のThorgeirの口癖です。その上で選手として技を競う側も、スポーツマンシップに則った正々堂々たる戦いを、繰り広げているのです。