第1回 JCSFキャスティングスポーツ全日本選手権 終了しました
6月に入ってからずっと天気予報とにらめっこをしていた心配事が、すっ飛んでしまうような晴天の2日間、両日とも一日中照りつける太陽の日差しの絶好のコンディション。各選手ともに好記録が続出しました。
全日本選手権を開催するにあたり、JCSFでは優勝カップを用意することとしました。5種総合、全種目総合、フライ総合の3つの総合種目においてその年のチャンピオンに1年間、預かってもらう優勝トロフィーです。2年目からは1本ずつ、勝者の名前が入ったリボンが増えていきます。大会の歴史を刻み始める第1回大会だからこそ、できるというものです。
そして、各地で開催する大会でも使用できる、金銀銅のロゴバッジをつくりました。皆さんからお預かりした年会費を使ってまとめた個数を発注させていただきました。Made in Japanのハイクオリティのバッジを、専用の台紙につけて表彰できるような仕組みです。このバッジは7月の大会から活用していただこうと考えていましたが、バッジメーカーの協力で今回の全日本選手権にも間に合ったので、メダルの副賞として入賞者に授与できることになりました。バッジのデザインしてくださったデザイナーの佐藤さん、今回のバッジ以外にもロゴを始め、沢山のデザインワークでご協力いただいております。ありがとうございます。
全日本選手権初日は、プラグ種目を中心とした構成でした。 この日の主役は、なんといっても「Giri」、小田切選手です。
初日に開催した種目6種目中4種目で『優勝!』です。本人もFacebookで「初代チャンピオン、狙ってる」としていたことから、独走態勢に突入か!
そのGiriを追うのは、櫻井選手(金2)と岡本選手(銀4)。スコア的にはまだ追いつけるところで踏ん張っています。
総合種目を狙う3人の他にも、好成績続出です。古傷が治りきらず、ディスタンス系の種目にエントリーしていない加登選手も4種で95点と安定したスコアを出していきます。
1年以上、キャスティングスポーツから遠ざかっていた佐藤選手、「練習してなくて」といいながら、安定したスコアを残します。
宮城の後藤選手の活躍も光っていました。特に5種のスピニング片手投げ種目では、見違えました。
北海道から参戦の武田選手も上位に食い込んできています。
大会数は少なかったとはいえ、皆さん、モチベーションを持って、しっかりと練習されているようです。
今回の大会会場は、宿泊先のホテルのすぐ裏手で、ゴルフ場とゴルフ場に挟まれた、野田市が管理する多目的広場でした。
ディスタンス系の種目を開催しても安心の広さとセーフティゾーンを持っています。野池にも隣接しており、ルアーロッドをもって釣りに来ている人たちもいました。同じ釣り道具を使って陸上で競技をしている我々をみて、最初は少し怪訝そうな表情でしたが、競技の内容を説明すると理解していただけたようです。次回は是非参加していただきたいですね。
日付が変って大会2日目、フライ種目を中心とした競技構成です。
新たに北海道から、中部から参加選手が駆けつけてくれ、参加選手数は増えました。これでこそ、全日本選手権!
最初の種目はフライ正確度。風の影響の少ない午前中、朝一番に開催されることが多い種目です。選手にとってはこの種目が、自分のメンタルを試される種目と言えるでしょう。投てき台に登ってからの数分間に、己の「気持ち」が試されるのです。
ロッドを構えた瞬間に膝がガクガクし始める、全身が耳になったかのように身の回りの色んな音が聞こえてくるようになる、ロッドを持つ手が震えて仕方がない、などなど、普段の練習のときには考えられないようなことが、数分間続くのです。そしてそれは結果的に、的を外す、メジャリングを間違える、などの悪い方向につながるのです。
その逆境を乗り越えるには、逆境に負けない強い意志、が必要で、それを形にした選手がいました。
櫻井選手です。フライ正確度種目のプレイオフを、得意の早打ちで先行し、見事パーフェクトをたたき出しました。
今回のプレイオフは、3名が金メダルをかけて競いました。斉藤選手はプレイオフ初出場。確実に当てる練習を積み重ねた結果の賜物です。
そしてもう一人、早打ちで知られる岡本選手もプレイオフに残りました。つまり3名の選手のうち、2名は早打ちの技を持っています。
両選手とも1分以内を狙えるのです。 3人が並んで投てき台に上がり、主審のスタートコールを待ちます。
選手たちの緊張感はとっくにピークに達しています。ターゲットに向かって左から、岡本選手、櫻井選手、斉藤選手が並んでいます。
「よ~い、はじめ!」スタートコールの直後、真っ先にNo.3を射ったのは櫻井選手。おそらく2秒も経っていなかったでしょう。
岡本選手は「3番の音を聞いた瞬間、プレッシャーを掛ける側に切り替えた」ようで、いつも以上に慎重に的を狙っています。かたや、順調にヒットを積み重ね、先行する櫻井選手。このまま逃げ切りか、と思いきや、ラインがリールに絡みつくトラブルが発生!懸命に腕を伸ばし、かろうじてターゲットに当てながらウェットラウンドに突入。周りを気にしている余裕は選手にはありません。ましてや同じ作戦で臨む選手がいることは分かっています。自分に打ち勝つ、それしかないのです。
先行していると分かっている櫻井選手のプレッシャーは計り知れません。ウェットラウンドでも同様のトラブルが発生した櫻井選手。普通の練習の時には、1ラウンドで同じトラブルが2度も起きることはめったにないのです。しかし、それがあるのも、試合だからこそ。一か八かで腕を伸ばした先でフライが届いた先は!?
一方、最初の段階で「追いかける側」にシフトした岡本選手。確実に狙っていく作戦にしたというものの、リズムはあまり変っていません。
「外しやすいターゲットのところでフォルスキャストを1回増やす安全策」を取ったようで、終わってみれば1分12秒。
「いつもは1分5秒とかなので、やっぱりゆっくりはゆっくりでしたが…」と。
安全策を取ったものの、ドライラウンドの5番を1つ外してしまっていたのです。
「ウェットの途中でロッドを投げ捨てるような音が聞こえたので『行けたかな』って思ったんですけど」と苦笑い。
その音とは、トラブルを抱えながらも1分5秒で100点で投げ切った櫻井選手が嬉しさの余り、ロッドが手から離れて落下した音、だったのです!
選手の緊張感は、コートを担当している審判にもビリビリ伝わってきます。プレイオフで櫻井選手のコートを担当した主審も「息が詰まった」と語っていました。その緊張感は、世界選手権で感じるものと全く同じです。レベルの高い大会で『場数をこなしてきた選手』たちが強い理由も納得できるというもの。
そんなプレイオフの中で、突っ走る2人をものともせず、自分のキャスティングを貫いた斉藤選手も成長株の1人といって間違いはありません。
続いて2種フライ片手投げ距離種目。初めての会場でのコート設営は、サウスポーに味方をしたのか、今大会のMr. Gold Medal!小田切選手が2位の小原選手に「1cm」の差をつけて、優勝をもぎ取りました。ここでも小林選手、浜野選手といった、今後有望な選手たちが上位に食い込んできています。これからのレベルアップが楽しみな種目といえます。
反面、6種フライ両手投げ距離種目では、いぶし銀の技が光りました。今回の条件で1人70m台にフライを運んだ大島選手が優勝、2位には同じくきれいなループで70m一歩手前まで飛ばした真辺選手、3位には「最近全く練習してなくてさ」といいながら68m台まで飛ばした佐藤選手が続いたのです。改めてキャスティングとは『力ではなく技で競うスポーツだ』と思えましら。だから面白いのです。
各種目の結果は成績表をご参照いただきつつ、総合種目の結果をまとめました。 今回の全日本選手権では、FlyCastingRuleの種目から『Sea Trout Distance』と『Salmon Distance』の2種目も開催しました。本来は水面で行う種目ですが、今回は2種と同じコートを使いました。午後になって風がでてきたこともあり、Sea Trout種目をやりながら「これって、2種より飛ぶんじゃないの?」と首をかしげる選手もチラホラと。
Salmon種目でも良く見えるフローティングラインが空中にきれいなループを描いてゆっくりとそしてシャープに飛んで行く姿が印象的でした。
今回の大会では一番多い種目で18名のエントリーがありました。「18人で全日本選手権だって?」と思われるかもしれません。
以前開催された規模の大きな大会では、50名を超える選手のエントリーがあった時期もあります。それが、今では多くてもこの人数。実際、国内でもっとも参加人数が多い大会を開催しているのは、北海道です。現状、これほどまでにキャスティングスポーツの参加人口は減少してしまっています。
今回、急遽スケジュールを変更することにしたため、やむなく参加を断念された方もいらっしゃいます。その人数を加えても、全盛期の数にはまだまだ追いつかないのが実情です。 とはいえ、JCSFにご参加いただいている方々の、キャスティングスポーツへのアツい思いは、冷めることはありません。それぞれが自分の技を磨くために、練習を繰り返しています。そして、新しい仲間たちも、どんどん増え続けてきています。
Fly Castingカテゴリーだけでなく、Lure Castingカテゴリーの方々も、子どもたちも、続々増え続けてきています。きっと何年後かには、かつて開催された大会以上に大きな大会を実現できることは、間違いないでしょう。 JCSFでは、そのような皆さんのサポートをさせていただきます。
大会運営で使うメダルの変わりに、ピンバッジを用意しました。大会開催経費の負担を少なくすることで、より沢山の大会を、全国各地で開催してもらえるように、皆さんからお預かりさせていただいた年会費を活用させていただき、準備を整えています。
最後になりますが、今回の大会開催にあたり、JSCのメンバーからの多大なるご協力をいただきましたことにお礼を申し上げさせていただきます。第1回JCSF全日本選手権は、皆さんのご協力がなかったら成立しないものでした。改めて感謝申し上げます。 また、JCSFのロゴや今回のピンバッジ、JCSF旗などのデザインでいつもお世話になっている、佐藤選手にも、改めてお礼の言葉を申し上げさせていただきます。ありがとうございました。
ジメジメとした梅雨空は、もうしばらく続きそうですが、少しくらいの雨ならば、キャスティングの練習はできるというものです。 7月には中旬に北海道・旭川市と岐阜県・可児市で同じ日に大会が開催されます。詳細につきましては、JCSFのHPやFacebookページをご参照いただきつつ 、より多くの皆さんのご参加をお待ちしております。ふるってご参加ください。 大会結果につきましては、こちらからDLしていただけますよう、よろしくお願いいたします。 2014_1st_JCSF_AllJapan_result