フライリールの話
フライリールの話としながら、なんでモノフィラのラインの写真がでているか、というと、海外の選手の中には、このスプールを使ってリールを自作している選手が結構いる、のです。中にはセンターにベアリングを入れて、回り始めたら止まらない、というようなリールを作っている人もいたりするのです。
使う種目は、1種?2種?
http://www.americancastingassoc.org/assoc-membership/cast-masters/henry-mittel.html
今回は2種フライ片手投げ距離種目で使われている実例をご紹介させていただきます。
例えば、アメリカのHenry Mittel選手は、2種でこのリールを使っています。ACAのCast Masterのところのプロフィール画像にもでています。
忘れてはいませんか?
だとしたら「新品のラインを買ってきて、スプールだけ付け替えてそのまま使えば、いつも新品のランニングラインで試合に出られる!」と考えてしまいそうですが、ルールブックにはこのように記載されていることにご注目下さい。
そうなのです。ランニングラインは「リールに結んでおかなければいけない」と記載されています。ルールブックを翻訳していた時にも、なんでわざわざこんなことを書いているのだろう、と思ったりしましたが、このようなケースを想定していたのでしょうか。「飛距離を競う種目で、距離を測る際には、投げる側のリールから出ているラインが先端のフライまでつながっていなければならないのが、キャスティングスポーツです。となると、結んであることは必然」とも考えられます。
「結んでいる」の意図
仮に、上の写真にあるラインは、新品であれば300mの長さがあるとなっています。実際に1回の競技で使うのは、トラブルがあって切ったり繋いだりしたとしても、全体の1/3の100mもあれば、5分間では充分でしょう。実際、自分のスプールに巻いてあるラインも、その程度です。であれば、残り200mが下巻き状態になり、その分で「固定している・結んでいる状態」だと考えられます。とはいえ、自分でなにも確認していない状態のものを、ぶっつけ本番で試合に使う、というのは、少なからず不安が残ったりはしませんか?自分が使うのならば、事前に空いているスプールを電気ドリルやリサイクラー等に取り付けて、ラインの状態を確認する、くらいのことはするでしょうし、であるならばその時にラインを空のスプールに巻きつける時に、結ぶ、でしょう。
こういうケースもあるでしょう。何回も試合に出て使っているスプールで、残りが60mくらいしか残っていない状態のものをうっかり使ってしまって、競技中にスプールが回転してランニングラインが全て出てしまったとしたら、それは「ランニングラインが切れた」とみなされて、ゼロスコアとなってしまいます。
そんな「うっかり」なんて、ありえない、と思われるかもしれませんが、投てき台の上というのは、別世界で、普段考えられないことが起こり得る場所、なのです。遠くに投げることにしか集中していない、そちらにばかり意識が行ってしまっているときに、バッキングラインの残りを確認し忘れた、なんてことも充分起こり得ることだったりするのです。「なんでこんなことしてんだ、オレ orz…」となってしまうことを、事前に防ぐ意味も込めた親切心での「結んであること」なのかさえ思えます。
選手優位の考え方
最初の話に戻り、新品の状態で、たっぷりとラインが残っている状態のものを使っていたときに、良い記録がでたとしましょう。公認記録申請をしようとタックルコントロールを受ける時に、審判が「ラインが結んであるかどうか確認するから、残っているランニングラインを全部出して」ということにはなりませんし、少なくとも、JCSF公認大会では、そのようなことで選手の方に嫌な思いをさせるようなことはありません。結んであることの確認も「スピニング正確度種目のラインが20m以上巻かれていること」という記載にたいして、ラインの残存量を目測で行っているのと同じように、投げている間、ランニングラインがスプールに残っていた状態であればいい、と判断します。
しかし、結んでいないことが原因でスプールからラインが外れてしまったときは、これは「切れた」のと同じ扱いです。投てき中であれば、ファールです。とはいえ、切れることは、スプールにしっかり結びつけていたとしても、細いランニングラインを使っている時や、絡んだラインを結び直したところから、ランニングラインが切れることなど、よくあることですので、別の注意で回避してください。
このようなモノフィラのラインのスプールを利用した自作フライリールは、器用な方なら簡単に作ることができるでしょう。日本にも以前、3Mのトーナメントラインが巻いてあった8角形のスプールを使って自作していた選手がいらっしゃいました。こういうハンドメイドを楽しむことも、キャスティングスポーツの楽しさのひとつです。しかし、あまりにルールに記載されていることのキリギリを狙ってしまって、不用意なトラブルを避けることは、メンタルスポーツの1つであるキャスティングスポーツには重要なファクターです。安易なことを考えるよりも、晴れ舞台に立ったときの自分のために、不安要素を取り除くことこそ、注視すべきことではないでしょうか。
1種正確度種目で使っている選手の紹介は、次回以降で(写真が見つかっていないのです)