トップウォータープラッガーに捧ぐ(ベイトロッドでアキュラシー)

18gは5/8ozだということ

日本国内で「ベイトリールを使う釣り」というと、バスフィッシングとなるでしょう。実際に使われているベイトリールの大多数は、バスフィッシングで使われています。他には船釣り(カワハギ釣りとか電動リールとか)やカゴ浮き釣り、石鯛釣り、鯉釣りとかでしょうか。一日に何百回と投げる釣り、いわゆるキャスティングをしながらの釣りで使うのは、バスフィッシングを始めとするルアーフィッシングしかないでしょう。そのカテゴリーの中で、キャスティングスポーツでは、18gのプラグを使ったアキュラシー種目と両手投げ距離種目の2つの種目があります。
ちなみに、手持ちのザラスクープも重さを測ってみたら18gでした。

ポーランドのヤン・キタ選手が使っていたリールは、どう見てもカワハギ釣り用のリール「スマック・DAIWA」でした。日本では考えにくいリールでも、彼はこの種目のポーランド代表として出場していました。

正確に投げるのは釣りも同じ

バスフィッシングにもいろいろなスタイルがあります。最近の流行は、ベイトフィネスでしょうか。昔なら投げようとも思わなかった5gよりも軽いルアーをベイトリールを使って投げて、それで釣るスタイル。渓流でヤマメを狙うときは1gとかも使うらしいですから、時代は変わったものです。とはいえ、キャスティングスポーツでベイトリールを使う種目はというと、昔ながらの18g、つまり5/8oz。この重さは、メジャーどころのトップウォータープラグと、ほぼおなじ重さなのです。バルサ50やザラスクープ、多少の誤差はあれども、大体が18g前後の重量でした。バルサ50はトップウォータープラグとは言えないかもしれませんが、昔のトップウォーターの釣りは、狙ったポイント「岸壁の岸際や立木、杭から『5cmはなれたところに、ユルユルポトン』と落とすのだ」と、言われていたものです。それってつまり、一言で言うと「どれだけ正確に投げられるか」ということではないですか?

でっかいプラグをソフトに落とす?

正確に投げるということと、「ウォーキング・ザ・ドック」アクションをつけるために、スローテーパーのロッドがいい、と言われ続け、しかも横ブレしないようなグラスロッドは縦繊維だけでつくられたブランクが一番、と言われていた時代がありました。デッドストックのブランクを探し出して復刻してみたり、名前だけ使って日本で作ったロッドが商標登録されたり、その時代を経て本当に日本でそういう素材を使って作られたロッドが販売されていたのも、iPhoneが発売されるほんのちょっと前の時代だったりしたのです。ウォーキング・ザ・ドックの操作のためには、そういうロッドが必要だったのかもしれませんが、少なくとも正確に投げるためだけであれば、スローテーパーは必ずしも必要ではありません。釣り場で正確にソフトに着水させるように投げるだけならばサイドキャストのピッチングで投げた方が、どれだけソフトに落とせるかは情報が映像として出回っていますし、もっとソフトに落とすのであれば、フィリッピングだって良いわけです。もちろん、上級者が使いこなすことでスローテーパーのロッドは文字通り「使いこなして有効活用できる」というものですが、初心者が使うとバックラッシュの嵐、トラブったラインが周囲に迷惑をかける、釣りをしてる場合ではなくなる=キャスティングの練習にならなくなる、最悪のケースは「他の選手の邪魔をする(世界選手権限定)」、といいことはありません。それだからこそ、キャスティングスポーツの大会出場を目指して、日々の練習の中で自分の道具を使いこなすこと、が大事なのです。

気持ちよく一日釣りをするには

考えてみてください。ベイトリール、ただでさえ扱いにくいリールです。釣りに行った時に、いざ目の前の好ポイントに向かっている時に、投げた瞬間にバックラッシュしてしまい、食い気のある魚が目の前から去っていってしまったり、とか、大会会場に着いて試合の前に練習していた時に、大バックラッシュして、そのトラブルを直しているときに周りで練習している人の邪魔をしてしまったり、それが原因で肝心の大会も悲惨なスコアしか出せなかったら、とか。事前に練習しておけばいいだけのこと、ではないですか。普通なら、ちょっと練習すれば、すぐに上手くなります!

向いている道具とは?

では、どんなロッドが正確に投げるために向いているのかというと、今までの20年以上にわたる経験上及びそれ以上に継続している耳年増の知識から類推するに、ずばり(死語!)「10gだとちょっと強いと思える先調子」のロッド、あるいは「18gにはちょっと弱いかもな胴調子」のロッドが向いている、といえるでしょう。FC38というFenwickのロッドが3/8g(10g)にも5/8oz(18g)の種目にも使われていたのは、そういう理由でしょう。18gで一日中30mの距離を飛ばそうとすると、FC38は弱いかもしれません。でも、ロッドの反発だけを使って正確に投げるだけならば、それで充分だったりするのです。とすると、1oz(28g)を背負えてしまうブランクだと、ちょっと硬いかも、と思うところでもありますが、それはあくまでもロッドに書いてある表示は「目安」でしかありません。まずは自分で投げて、試してみる、というのが大事なところです。
具体的にいいます。リールは、なんでもいいです。これは本当になんでもいいです。好きなリールを使って下さい。ABU5000でもアンタレスDCでもLangleyでも、それこそ1000円くらいのベイトリールでも大丈夫です。18gのプラグを20m飛ばせればいいのですから、大抵のリールはカバーできます。
ラインですが、アメリカの選手はダクロンやPEを使いますが、これには理由があります。彼らがいつも練習しているのは、キャスティング専用の池です。つまり常にラインが濡れている状態で投げています。とすると、モノフィラよりも滑りにくいブレインデッドラインを好んで使うようになった、という経緯があるからです。とはいえ、最初からモノフィラで慣れる環境を作ってしまえば、モノフィラで十分です。伸びないからコントロールし易い、という声もありますが、トラブったときのリカバーの難しさは、ナイロンの比ではありません。少なくともブレインデッドラインを使いこなせていないうちは、大会に出るときはナイロンをつかいましょう。
ロッドです。実は、これも「なんでもいい」のですが、それでは説明になっていませんので、少し具体的に。「柔らかいロッドと硬いロッドだったらどっちがいいですか?」と聞かれたら、迷わずに「柔らかいロッド」です。片手で投げることを考えると、6フィートまででおさえておきたいですが、Steve Rajeffは6フィート6インチくらいだったかもしれません。逆にまだルールが24mまでの距離のターゲットを狙っていた時代に5フィートの柔らかいオービスのベイトロッドにABU1500Cを合わせてポンポン当てていたのが、先日他界されたKEITECの林圭一さんでした。ということをまとめると、柔らかいロッド、イメージ的にはトップウォータープラグを投げるようなロッドが向いていて、ジグやワームを使うようなロッドだとキツイです。ロッドに書いてある硬さの目安であれば、思い方のウェイト表記で「〜5/8oz」とか「〜18g」と書いてあると、ちょっと硬いかも、と思わなくもないですが、最初は持っている道具で始めるで大丈夫です。まずは投げてみることから始まるのです。

ターゲットまでの距離

実際の競技では、12mの距離から2m刻みで、14m、16m、18m、20mにある直径76cmのターゲットを狙います。そうそう、この76cmという中途半端な寸法は、30インチから来ているようです。18gも5/8ozですし、7.5gも元々は1/4ozと、アメリカと欧州の融合で国際ルールが成り立っているということがわかります。反面、アメリカにばかり押されていたわけでもありません。ベイトリールを使う種目で、ヨーロッパ勢からの欧州(応酬)もあったりするのです。
お後がよろしいようですので、以下、次号「遠投編」へ続きます…

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