フライ正確度
フライ種目の基本も、やはり正確度種目です。正確に投げられるからこそ、飛距離も伸びるというものです。
道具はちょっと特殊?
フライ正確度種目では、ドライラウンドとウェットラウンドと、2つの投げ方を求められます。ドライラウンドは、ターゲットに当てるときにフォルスキャストを最低1回はしなければいけないルールがあり、逆にウェットラウンドでは、フォルスキャストはしてはいけない、というルールになっています。使うタックルは、トーナメントロッドとトーナメント用フライラインのT38が基本となっていますが、それでは初心者の方には敷居が高すぎるので、国内ルールでは「明るい色のラインは使用可」としています。ですので、自分が持っているフライフィッシング用のタックルで参加することができますが、なるべく高番手のものを使うほうが、練習にもなりますのでおすすめです。
(軽い番手の道具での正確度種目は、フライキャスティングルールのトラウトアキュラシーをおすすめします)。
参考までに、釣り用のフライロッドとトーナメントロッドの太さを比べてみました。トーナメント用ロッドのティップ側の太さよりも、釣り用のロッドのバット部分が細いのです。
ドライフライラウンド
この種目でまず最初になれることは、投てき台の上から投げること、でしょうか。他の種目でも投てき位置に入ったところで心拍数と血圧は急上昇ですが、一段上に上がる、というところで、緊張感4割増、といったところでしょうか。とにかく膝が震えることを覚悟して下さい(でも、直ぐになれます)。スタートする前は、ロッドと同じ長さのフライラインを出して、リーダーとの結び目を審判に見せて確認してもらいます。その後でフライを持って、スタートコールを待つことになります。緊張感のピークはこのときです!ロッドティップがブルブル震えるくらいは覚悟しましょう。投てきするターゲットは5つ。左から1番2番3番4番5番と距離が遠くなります。一番左の1番は8m、右の5番は13m、他のターゲットはそれぞれ、1.8mの間隔で並んでいます。
投擲する順番は、ドライラウンドは、3-1-4-2-5-3-1-4-2-5の10投。この順番でラインの長さを調節しながら、各ターゲットにフライを当てていきます。フライが浮いている必要はありません。とにかく真っ直ぐに振ってきっちりターンさせて当てていくことが要求されます。
ウエットラウンド
ドライラウンド終了後、5番ターゲットを狙った後で、1番ターゲットまでの距離をフォルスキャストせずにフライラインを手繰って距離を調節して、フォルスキャストをせずにフライを当てていきます。順番は1-2-3-4-5-1-2-3-4-5。こちらも2往復10投します。そして全ての投てきを終えると、合計20投。1つ当たると5点加算されるので、合計100点を競い合います。
メジャリングテクニック
トラウトアキュラシーやACAのルールのように、最長と最短のターゲットの距離が決まっているだけで、途中のターゲットの距離がきまっていないルールではなく、ICSF種目では1〜5番ターゲットの距離は、全て計算で出せてしまう距離になっています。そのため殆どの選手は、自分の体を使って、メジャリングというテクニックを使いながら、ラインの長さを調節しています。日本の釣りでいうところの、ヒトヒロ・半ピロのような、腕をいっぱいに伸ばした長さだったり、片方はいっぱいに伸ばしているのに反対の手は胸のところに留めておく、とかの測り方です。さすがに20mm程度のフライを目で追うだけで長さの調節をするのは至難の業ですので、このようなテクニックが使われていたりするのです。
実釣との関係
正確に投げるのであれば、例えば実釣の場合、目の前で魚がライズしたそのポイントにフライを落とす正確さが求められるでしょう。しかし、キャスティング競技の場合は、必ずしもその投げ方が魚釣りに直結するか、というと、実際はそうでもないかもしれません。同じ投げ方をしたら、魚は逃げるでしょう。とはいえ、実釣で使う道具と同じもので競技をおこなうのではなく、ある意味野球のバッティングでいうところの「マスコットバット」のように強くて重い道具を使っての競技の練習ですので、マスコットバットで試合にでないのと同じように、同じ道具で釣りをするわけではない、と考えると合点がいくというものでしょう。3番のロッドでドライフライの釣りをするのではなく、競技で使うときは、8番以上のロッドでドライフライの釣りをするようなもので、8番に慣れてしまえば3番のロッドは持っていないように扱えるようになってしまいます。思い通りにあつかえる、という余裕がでてくるというものです。
手持ちのタックルでまずは挑戦を
今の日本で大会に出ることを考えると、周りの選手たちのほとんどはT38を使って試合に出ている、でしょう。自分も最初から、と思う気持ちもわかります。でも、いつも渓流で釣りをされているのであれば、まずは8番くらいのロッドを使って、ターゲットに向かう練習をされてみることをおすすめします。1980年代の、まだシンキングラインを使えるルールだった頃は、3MのWF8S Type4とかを使っていた選手も多くいましたし、それで100点を出していたものです。
真っ直ぐにロッドを振る練習、オーバーターンさせないキャスティングの技術向上、これが1種の練習のポイントになるでしょう。加えるならメジャリングテクニックによるラインさばきの上達、もあります。釣りとは掛けはなれたような道具で行う種目かもしれませんが、この種目の練習から受けられる恩恵は、計り知れません。
食わず嫌いに成らず、ぜひ一度挑戦してみてください。