メジャリングの考察2017その4
1994年9月に開催されたキャスティングスポーツ世界選手権スイス大会。この大会をきっかけに、今の日本のキャスティングスポーツの歴史は大きく変わりました。この大会に日本から参加した選手たちは、遣唐使が如く、あらゆる情報を持ち帰り、今に繋げています。その1つがフライ正確度種目にも根付いているのです。
Thomas Maire
この大会に出場したことがきっかけで親しくなった選手はたくさんいましたが、Thomasほど日本のキャスティングの発展のためにサポートしてくれた選手はいないでしょう。中でもこの種目のメジャリングの考え方には、ドイツ人らしい生真面目さを強く感じたのでした。
きっちり1mを測る秘策
ロッドやラインに印をつけることは、ルール上では禁止されているこの種目です。それ故に多くの選手は前述のように体のあちこちを使って、目的の長さに調節しています。しかし、来ているウェアのボリュームや正月太りなどの体型の変化でその長さが変わってしまいかねませんし、そもそも見もしないで毎回同じところに両手を持っていくのは難しいですよね。そこでThomasがやっていた方法は、バットガイドの位置を利用する、ということでした。完成品の市販品がほとんどない競技用のロッドです。自分で作る際に取り付けるバットガイドをリールに取り付けたラインガイドから1mの位置に取り付ければ…。コロンブスの卵とはこのことでしょう。印を付けているわけではなく、当然ついているものが、たまたま1mのところにあっただけ、なのですから。
逆巻きのリール
通常、フライリールをロッドにつけるときは、右ハンドルならば時計回りに、左ハンドルなら反時計回りにスプールを回転させます。しかしThomasは、右ハンドル時計回りのリールを、ハンドルが左側に来るように、セットしていました。そして愛用のATリールのフレームには25サイズのFujiガイドがつけられていました。
合理的なメジャリング「Tメジャー」
Thomasのキャスティングは合理性を極めたものです。ほとんどの選手が最初にリールからラインを引き出してから最初のターゲットを狙うのに対して、Thomasはバックキャストのときにリールからラインを引き出します。リールのドラグはきっちり締めておき、ラインを持って引き出すときにはラインを出せるものの、フォルスキャストではラインが出てこないようにしておくのです。
メジャリングの長さは、110cmと140cmの2つでカバー
Thomasのメジャリング(以下、Tメジャー)を解説していきます。ドライラウンドのTメジャーは、110cmと140cmの2種類だけです。スタート時のラインの長さは300cm+300cm+190cm=790cm。競技の最初のバックキャストのときにラインを引き出します。バックキャストで振り上げるロッドに付けられたリールのガイドから下ろした左手でつまんだラインまでの長さは110cm。これを2回繰り返します。するとリールから出ているラインの長さは1010cm。No3の中心は1017cmですので、ややショート気味に当たることになります。まっすぐ投げていれば問題ありません。次のNo1はトリッキーです。合理性を考えたThomasは、140cmを1回だけマイナスした870cmの状態でシュートを撃ちます。もちろんこの状態ではターゲットを遥かに超えてしまうので、体を後ろに反らせ手の位置を後方にずらして調整します。その際、足の位置が投てき台の縁から離れてしまうことがないように注意することがポイントです。ルールの中に、どちらか片足は投てき台の縁の位置にあること、と定められています。次のターゲットはNo4。リールからはラインがNo3までの長さが出ています。同じくバックキャストの時に140cmのTメジャーでリールからラインを引き出します。ここにThomasの合理性のポイントがもう1つ。No3からNo1でマイナスの140cmを測るということは、その長さ分を同時にリールから引き出せるということでもあります。もう1つ忘れてはいけないことが、ラインを押さえている中指とリールについているガイドまでの距離。リールから140cmのラインを引き出すということは、その距離も加味しなければなりません。しかし、元々70cmオーバーしている分が減るだけなので、後ろに体を反らす分が楽になるのです。このようにしてNo1を狙いながら、手元ではすでにNo4のラインが引き出されている状態になっていますので、そのままNo4を狙います。次のNo2のときにも同じことをします。No4からNo2までは110cmと140cmで短くしていきます。ここでも140cm短くする時に、リールから140cm引き出してNo5のための準備をしておきます。最初に140cmを取ってもう一度バックキャストするときに110cmをとってそのままNo2を狙えば、手数が増えることはありません。No5は、出ているラインがそのままの長さになっていますので、そのまま狙えます。No5からNo3に戻る時は、100cmのところにあるガイドのところからとったラインをグリップを持つ中指に引っ掛けつつ、残り40cmを引きます。ThomasはJana Maiselのようにフローティングメジャーでやっていましたが、肘の位置などで確認しながらきっちり測るほうがベターです。そして2ラウンド目に突入します。
YouTubeチャンネル作りました
長々と書くよりも、実際に見ていただいたほうがわかりやすいので、以前撮影した動画をご覧ください。Thomasのスタイルを基本に、少し進化(?)させていますが、ほぼ同じです。YouTubeでチャンネルも作りました。こちらも徐々にメンテナンスしていきますので、ご期待下さい!