8種マルチプライヤー正確度2
グリップの握り方は、その人の手の大きさ等の違いもあるため、一概に「こう持ったほうがいい」という定石はありません。ただ、今までいろいろな持ち方を試してみて、大きく分けて2つの持ち方に分類できると考えます。
深く握るのと浅く握るの違い
左の「浅く握るタイプ」の持ち方は、ふわっとプラグを落としに行くような投げ方に向いています。ロッドアクションは割りと先調子で、ロッド全体を使うというよりも、目的の距離を投げるのに上から必要十分な分だけ曲がってくれて、その反発を活かしてプラグを飛ばすような感じ。リストもそれほど使わずに、ほぼ固定しておき、肘を使って投げる、まさにダーツのなげるかのようにします。グリップを「持つ」というよりも「摘む」、みたいな。
右の「深く握るタイプ」は、積極的にロッドを曲げて、低い弾道でプラグを当てに行くような投げ方向きです。短めの柔らかいロッドをしならせてリリースポイントを低くして、落下速度に負けないようその分勢いをつけてプラグを弾き飛ばします。手のひらでしっかり「握る」感じです。
横から見てみるとこんな感じ
親指の第一関節が、グリップの上にあるのとリールのサムバーの上にある、この違いはテイクバックからフォワードキャストに移るとき際の、手にもっとも荷重がかかるときに、どこで支えるか、の違いになります。繊細にブレーキコントロールをするには、スプールと触れている親指の動作がポイントです。親指のどの部分でスプールのどこを押さえるか、が変わってくるのです。
ロッドに仕事をさせて投げるダーツタイプのキャスティングの場合は、ロッドにひねりを加えるのは禁物です。僅かなブレが10m先では大きなズレになって違う方向にプラグを落とすことになります。そのためには、親指でもグリップを支えることで、そのひねりを押さえることがポイントになります。リストを開いてしまうと、持っているグリップを回転させてしまうことになってしまうため、親指でグリップを押さえ込むことでそれを防止するのです。
逆に、リストを使ってロッドを曲げるタイプの投げ方をするのであれば、親指での支えはむしろじゃまになります。手のひら全体でグリップを握り、テイクバックのときにも手のひらでパワーを受け止めて押さえ込み、ロッドをしならせるのです。
スプールエッジでサミング
以前、雑誌「Fishing」に掲載されていたキャステイングスポーツ紹介記事の中でスティーブは「サミングはスプールとラインを半々で押さえるようにする」としていました。今のリールのスプールで半々に押さえるとなると、糸巻き量を少なくするしかありません。この認識の違いは、使っているリールの違いから生じています。アメリカで使われているLangleyやShakespearのリールのスプールは、エッジがとてつもなく大きいのです。
そういえば、前に紹介したフリップキャストの名手、シャグ・シャヒドと一緒にデモンストレーションを東京フィッシングショーで披露してくれたオムリ・トーマス。本来はアン・ストローベルが来日する筈だったところ、彼女のお母さんが急逝したことでキャンセルとなり、急遽代役でデモンストレーションをすることになったのですが、使うリールとして提示されたのが、ABU2100SPORTで、高田弘之さんがお持ちだったものを用意して使ってもらった、ということがありました。このときもスプールエッジの大きいものが使いやすい、慣れている、ということだったのかもしれません。
ちなみにこのLangleyはチューニングされています。Steve Rajeff直々の手仕事です。TIFAがGloomisを扱っているときに来日したときにダイレクトドライブリールの話になり、それなら持っているからお願い、と頼んだところ快諾してくださり、翌年の世界選手権で受け取りました。そのようなチューンの話は、またの機会に。