世界選手権2013 大会初日

雨で始まったキャスティング世界選手権初日。天気だけでなく、波乱の大会の始まりでもありました。今日はアキュラシー(正確度)種目が、フライとアレンバーグ。そしてフライ片手投げ距離の計3種目が行われます
世界選手権では審判は持ち場のコートが決まっており、同じ番号のコートの審判を各種目ごとに行います。選手が種目ごとにあちこちコートを行き来する、というやり方です。
今回の持ち場は第3コート。相棒はAlex。きっちり仕事をしそうなドイツ人気質が伺えるナイスガイです。そして、なんといっても特筆すべきことは、スコアブックが無くなったことです。全ての集計は、PCを使ってその場で入力し、確認のサインは各コートにあるPCのスペースバーを押すだけ、という仕組みになりました。昨年のエストニア大会でもずっと集計に携わり、コントロールタワーに掲示してくれていました。そして今回は結果発表も集計とリアルタイムでモニターに表示されるのです。

第1種目フライ正確度

流石に最初の種目、どの選手も強い緊張感で臨んできます。投擲台の上で深く深呼吸をしながら準備を整えます。日本と同じく、投擲順の最初は同時スタート、次からは各コート毎のスタートになるので、選手の様子に合わせてこちらもスタートのタイミングを見計らうのです。予選ラウンドの第3コートには、パトリック・レクサの名前がありました。百戦錬磨の彼からも、他の選手と同じかそれ以上の緊張感が伝わってきます。「Get ready? Start!」審判としてターゲットの近くで判定をするとよく分かるのが「当たっている」と「当てている」の違いです。当たっているときは、プラグにしろフライにしろ『生きて』ターゲットに当たっている、そう自らが飛び込んでいくような当たり方をするのです。パトリックのアキュラシーは、正にそのことを強く感じるキャスティングでした。メジャーの正確さは、他の選手の誰よりも優れていました。日本でも使っているアキュラシー用ターゲットの中にある小さい円形の補強用の構造体、その円の中にほとんどの投擲でフライが当たっていたのです、いや『当てていた』のです。プラグアキュラシーで、ブレーキを全く掛けずにターゲットに当てている感じです。リーダーをターンさせて距離を合わせている、というような生易しいものではありません。ラインの先端についているフライをど真ん中にぶち込んでいる、のです。
「パトリック、余裕の100点」と、結果だけ見ると、また文字にしてみると、予選なんて楽勝で通過しているかのように受け取ってしまいますが、当の本人は、またその審判をしていたジャッジは「そんな余裕なんてものはない」ということは分かるのです。投擲台の上にいたときの険しい表情が緩んでホッとしている安堵感、成し遂げた達成感、そして緊張感と一緒に目元を緩めて嬉しさが伝わってくるのです。
そんな極限の緊張の中で、今回の優勝を勝ち取ったのは、スウェーデンのグスタフ・クランズバーグ(Gustav Kransberg)。若気の至りの勢いで突破したのか、1分19秒の早打ちで勝ち取りました。女子はチェコのカタリナです。

第3種スピニング正確度アレンバーグ

「プラグがターゲットに飛び込んでくる」1種と同じかそれ以上に、当てる気持ちが伝わってくるのが、このアレンバーグ種目です。76cmの円形のターゲットを中心にした同心円が描かれたシートを使いますが、ほとんどの選手は中心のターゲットに当ててきます。外したな、と思えるプラグをコントロールして当ててくるのです。圧巻はクロアチア勢の見事なあて方です。飛んできたプラグがターゲットの真上でピタッと止まってそのまま落ちるのです。去年間近で見た時にも衝撃を受けましたが、今年はその技に磨きがかかっていました。
この種目では多くの選手がラインの巻き取り時間の短縮のため、リールの改造をしているのですが、彼らはノーマルのダブルハンドルのリールを使っています。自らの力とハンドルの慣性で改造リールと同等の早巻きを実現させて、風の影響などを考えず、ただ迷うこと無く撃ちぬいていくのです。予選通過1位はゴラン、ブルーノは6位だったので、決勝では第3コート、そう担当しているコートで戦ったのです。正確に素早く、そして当てていく。ゴランの息遣いにシンクロするかのような緊張を味わいながら投擲は進みます。最後の投擲、ここまでミスは無い。白いプラグがターゲットに当たって、ブルーノ100点でガッツポーズ! と同時にゴランが投げている8コートを確認。1分11秒、同タイム! そしてスコアボードに掲示された結果は! ゴラン96点!痛恨の失投で何と今回は5位! 優勝は見事唯一の決勝100点のブルーノ・ボルベット! 女子は予選をこれまた第3コートで100点を出したサブリナが失投で2位。優勝は1種と同じくチェコのカタリナでした。

第2種フライ片手投げ距離

距離種目はどの種目でも、Outside、つまりペグ打ち側にいるので、残念ながら選手の息遣いを感じることはできません。しかし、ループの先端とその落下地点での観察はできます。今回の傾向としては、リーダーの結び目をLoop to Loopにしている選手が、意外と多かったこと、リーダーの先端の結び目の余りを、5cm以上だしている選手もいたこと、くらいでしょうか。飛ばしてくる選手とは、やはり風をうまく使っている、ということがあります。いい風のときにいいループで捕まえて距離を伸ばしてくる、そして最後まで粘る、というのが決勝まで残ったかと思われます。
女子の優勝、アレーナ・クラウスラー(Alena Kläusler)/オーストリアです。決勝ではダントツで53m34cm、飛ばしました。彼女のキャスティングは、実はチェコで教わったそうです。特に体の使い方、左手のホールの仕方などは、今のチェコチームのやっていることと、全く同じ考え方につながっているようです。
男子、ハインツ(Heinz MaireHansge)の優勝は久しぶりじゃないでしょうか。しかしその技は未だに衰えることを知りません。うまく風を捕まえて飛ばしてきます。チェコからもカレル・コブリハ(Karel Kobliha)が2位に入りました。数少ない英語を話すチェコチームのメンバーです。
書き足りませんが、取り急ぎここまでで(といっても一日遅れですみません)。
こちらもチェックしてみてください。盟友Olafのクラブのサイトです。
http://www.casting-club-saalfeld.de/

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